まぁ、いいや。
桜は ひらり舞い落ちるから美しい
花火は ゆらり消えゆくから美しい
紅葉は はらり散るから美しい
雪は ふらり溶けるから美しい
恋は ふたり 離れるから美しい。
と、僕は思っている。
完全なる恋などない。
燃え上がった恋は灰となって散るしかない。
それでもまだ種火のようにしぶとく燃えているのなら、
それは恋ではなく“執着”だ。
恋愛中毒患者は年中常に口を開けば唱える。
春は出会いの季節ね、恋の季節ね
夏は燃える季節ね、恋の季節ね
秋はひと肌恋しい季節ね、恋の季節ね
冬はクリスマスの季節ね、恋の季節ね
年がら年中、恋をしたいと唱える。
その度に傷ついて、傷ついた自分に満足する。
幸せになることよりも傷つくことを望んでいる。その人は認めないけどね。
『失恋』を『恋』よりも、愛してしまっている。
別れ際に
『あなたは、私のこと一生忘れないと思う』と
消え入るような口振りで放った女がいた。
その女は以前
『気持ちよくなるだけ気持ちよくなって、満足したらポイ捨てするんでしょ、タバコと一緒なんだ私。』
と少女のようなことを言っていた。
いつしか少女は女になっていた。
タバコをやめることが、どれだけ難しいことか、バレてしまったのか。
手が綺麗だね。
と褒めると
『この手でどうされたいの』
と返す、そんな女。
キスをする時、冷えた鼻先を
僕の鼻先に恭しく擦り付けてから
唇をくわえる、そんな女。
僕は君のこと、一生忘れられないのか。
まぁ、いいや。外は寒いな。