季節の話、
『季節はすぎていくのに、私は取り残されている気がします。
まだ引きずってるなんて、人には言えないし
自分の中でももう決着がついてると思ってるから、いいんですけどね。』
と、あからさまな嘘をついた女がいた。
じゃあなんでそんな顔をしてるんだ。本当はそうじゃないんだろうけど、
まあそう彼女が腹落ちしてるなら、それでいいかと思った。
ここで『そんなことないんだろ!追いかけろよそいつのこと!』なんて黄昏時の少女漫画の男子高校生みたいなことを言うほどキャピってない。
あ、忘れようとする努力は無駄だよ。
忘れよう忘れようなんて思わない方がいい。
時間の流れに頼るしかない。
でも、人の記憶力の嫌なところだね。
風景、匂い、音楽、日付、地名、いろんなところから記憶に結びついて来る。
きっとまたその人のことを思い出す日が来るよ、残念だけどね。
久しぶりに思い出す人のことは、案外笑い話になったりするよ。
だから安心して今はその人のことを思えばいい。
青ざめた顔をしていたから、少し楽になるかな。
人を好きになることは、嫌いにならないでくれるといいな。
誰のことも好きでない時間は、自分のことも好きになれない時間だからね。
季節が進みもしない、春も夏も秋も冬もない。せっかく四季の国に居て、四季の恋ができるんだから、疎ましいくらいに誰かを想うといい。
1人のことでもいいし、場合によっては2人、3人、もっとでもいいんじゃないかな。器用ならね。
自分に嘘をつくのもたまには良いかもしれない。
私はこの人を好きなんだ、って嘘がいつしか本当になったりする。
本当になったあとで嘘を愛おしく思い返せる日もきたりする。
何があるかわからないし、案外目まぐるしく君を取り巻く季節も変わるよ。
その季節の話をしよう、
その季節の恋をしよう。
穏やかな恋の始まりも、
燃えるような恋の盛り上がりも、
色鮮やかな恋の戯れも、
白く尽きた恋の終わりも、
すべてを受け入れて季節を過ごしていけばいい。
季節に流されて、忘れることは忘れて、想うだけ想って、また春になるよ。
桜が散りましたね。次は夏ですかね。