手紙。
祖母から見せてもらった手紙。
祖父のプロポーズの手紙。
口下手だから手紙を読んでください、と
目の前で渡されたらしい。
『突然ですが、
僕と一緒に生きてはくれませんか。
人は賢くないから
失ってからしか愛する人の大切さを
身を以て知ることが出来ないそうです。
僕は貴女を大切に思っています。
世界で一番と言うには世界を知らなすぎるから
僕のこれまでの人生で一番、と言っておきます。
僕は貴女と、しわしわになるまで、孫やひ孫に囲まれるまで、隣に居たいと思っています。
別れの日はいつか突然来るでしょう。
私は貴女を置いて逝くような、
そんな無責任な人生の終りはしたくありません。
貴女の居なくなった世界は
どんな色をしているのでしょう。
大切な人を、失う前から大切だと思っていても
それでも何か気付くことがあるのでしょうか。
私はそれを知りたい。
貴女より大切なものはなかったな、と
やっぱりな、と
答え合わせをして、貴女のもとへ向かいたい。
貴女を何より大切にします。
僕と一緒に生きてはくれませんか。』